キッチンやお風呂まわりを掃除するための洗剤には「強アルカリ性洗剤」という種類があります。
たまに「強アルカリ性洗剤を使用するのは危険!」という情報を耳にしますが、それは本当なのでしょうか。
今回は強アルカリ性洗剤を理解するために、特徴や安全に使用するポイントについてご紹介します。
洗剤は大きく分類して以下の3種類の性質があります。
これらはpH(ペーハー)と呼ばれる0から14までの数値によって分類され、それぞれ特徴が異なります。
こちらでは3つの洗剤について詳しく説明します。
強アルカリ性洗剤とは、pH11を超える性質の洗剤を指します。
アルカリ性にもいくつか種類があり、pH9〜11の範囲を弱アルカリ性と呼ぶことがあります。
アルカリ性洗剤の特徴は、触るとヌルヌルした感触があり、反対の性質である酸性の汚れを落としやすい点です。
酸性の汚れには油や手あかなどがあるので、食器やキッチン周りの掃除には相性がいいです。
反対に水あかや石けんカスといった、同じアルカリ性由来の汚れには効果がありません。
pH値が高いほど洗浄力は上がるため、強アルカリ性洗剤は頑固な汚れも落としやすいです。
その分人体への刺激が強いので、洗剤を直接触れたり吸い込んだりしないように気をつける必要があります。
酸性洗剤とは、pHが6未満の性質を持っている洗剤を指します。
酸性洗剤の特徴は、水あかや石けんカスなどのアルカリ性の汚れを落としやすい点です。
反対に酸性の汚れである油や手あかの洗浄には効果がありません。
酸性洗剤を使用する注意点として、塩素を含んでいる洗剤との併用は必ず避けましょう。
この2つを混ぜ合わせると人体に有毒なガスが生まれ、命の危機にも関わります。
中性洗剤は、pHが6〜8の性質をもった洗剤を指します。
アルカリ性洗剤と酸性洗剤の両方の性質を備えているので、どちらの汚れに対しても効果的です。
また人体への刺激が少ないため、安心して使用できるのも特徴です。
しかしアルカリ性・酸性洗剤と比較すると洗浄力が落ちるので、頑固な汚れを落とすのには向いていません。
強アルカリ性洗剤を使用するときには、どのような危険があるのでしょうか。
こちらでは、実際に起こりうる事故について説明します。
強アルカリ性洗剤に直接触れると、やけどのような炎症が出現することがあります。
アルカリ性はタンパク質を溶かす性質があるので、肌に接触すると皮膚を少しずつ溶かし、やがて痛みを引き起こします。
すぐに痛みが出るわけではないので、知らないうちに接触して気づいたらやけどをしていた、というケースも多いです。
そのため中性洗剤や弱アルカリ性洗剤と同じような感覚で使用すると、思わぬ事故につながる危険性があります。
なかには皮膚の移植が必要なほど、やけどを負った事例も存在しています。
強アルカリ性洗剤を使用する際は十分に注意し、皮膚の異常時には素早い対処をしましょう。
強アルカリ性洗剤をアルミ容器に詰め替えると、容器が破裂する危険性があります。
これはアルカリ性との化学反応でアルミニウムが腐食し、水素が発生したことで起こる事故です。
密封されている容器のなかで水素が発生すると、内側からの圧力が徐々に高まり、最終的に破裂してしまいます。
アルミ容器の破裂による事故は過去に複数あり、洗剤を持ち出すため、あるいは誤って入ってしまったことが原因です。
自分だけでなく周囲にも被害が出るケースもあるので、必ずアルミ缶にアルカリ性洗剤を詰め替えないようにしましょう。
このように強アルカリ性洗剤は、適切に使用しないと人体に悪影響をおよぼす可能性があります。
事前知識がないと想定外の事故も起こりうるので、使用時には注意事項をよく確認する必要があります。
出典:専用容器以外の移し替えは危険(洗剤の事故) – 東京消防庁
強アルカリ性洗剤は誤った使い方をすると危険ですが、正しく使用すれば強力な洗浄力により、さまざまな掃除の役に立ちます。
こちらでは強アルカリ性洗剤の用途について説明します。
強アルカリ性洗剤の特徴でも述べたとおり、酸性である油汚れや皮脂汚れに強いです。
アルカリ性洗剤が油脂に含まれている脂肪酸に反応すると、石けんの性質に変化します。
この作用により油汚れ・皮脂汚れが簡単にはがれて、キレイに洗い流せます。
強アルカリ性洗剤は頑固な汚れも洗浄しやすいので、食器の他に換気扇やグリルにも対応可能です。
家庭だけでなく工場で使用されることもあり、活躍できる範囲は幅広いです。
強アルカリ性洗剤はタンパク質汚れも効果的に洗浄できます。
おもなタンパク質汚れは以下のとおりです。
このような汚れは一度固まるとなかなか落ちにくく、中性洗剤では洗浄が難しいです。
アルカリ性はタンパク質を細かく分解し、構造をもろくさせる作用があります。
そのため強アルカリ性洗剤を使用すると、付着したタンパク質を分解してキレイに洗い流せます。
タンパク質汚れは衣類に長時間放置するとシミになる危険性もあるので、早めに落としたいときに便利です。
まとめると、強アルカリ性洗剤に向いている家庭の掃除場所は以下のとおりです。
強アルカリ性洗剤は、木製素材の家具や床にシミが付く原因となるため使用できません。
表面に塗装をしていない木製素材は水が染み込みやすく、アルカリ性との化学反応で白または黒く変色します。
シミをつけてしまったときは酸性のもので中和する、表面を削るなどの対策を行いましょう。
お酢やクエン酸などの酸性を含んだ水で拭き取ると、シミが目立たなくなります。
このとき拭き取りが十分でないとカビの原因にもなるので、注意が必要です。
紙やすりを使用して削る方法も1つの手ですが、深い範囲までシミになっていると効果はうすいです。
アルミニウム素材に使用すると化学反応により腐食の原因となるため、使用は控えましょう。
アルミニウムの鍋やボウルにアルカリ性洗剤を塗布して長時間放置すると、腐食が進んで穴が開く可能性があります。
掃除をする際は、周囲の環境を含めた事前準備が必要です。
こちらでは強アルカリ性洗剤を安全に使用するためのポイントについて説明します。
アルカリ性洗剤はpH値が高くなるほど洗浄力は強まりますが、その分刺激も強くなります。
強アルカリ性洗剤は皮膚・粘膜に触れるとやけどや肌荒れの原因となるので、ゴム手袋やメガネ、マスクを装着しましょう。
強アルカリ性洗剤が皮膚についたらすぐに水で洗い流し、痛みやしびれといった違和感が残っているときは、医療機関で診察を受けてください。
洗剤が眼に入ったときも同様です。
大量の水で目を洗い、その後すぐに医療機関に受診してください。
適切な処置が遅いと失明する危険性もあるので、なるべく早く対応をしましょう。
また子どもが誤って触れないように、保管する場所も注意が必要です。
塩素を含む強アルカリ性洗剤は独特なニオイを発しています。
そのためニオイによる気分不快や吐き気を起こさないように、常に換気をして作業をしましょう。
アパートには浴室やトイレなどに窓がない部屋もあるので、換気扇を回さないと密閉空間となりやすいです。
窓がない場所での掃除は、換気扇を回しつつドアを開けて風通しをよくしておきましょう。
部屋にニオイを充満させないように、外につながる窓も開けておくと新鮮な空気の確保が可能です。
塩素を含むアルカリ性洗剤と酸性の物質が混ざると、有毒な塩素ガスが発生します。
塩素ガスを吸い込むと命に関わる危険性もあるので、必ず混ぜないように気をつけましょう。
強アルカリ性洗剤の保管時はもちろん、掃除を行う際も酸性洗剤が近くにないか確認をしてください。
掃除の最中に気づかないうちに酸性のものと混じっていた、という可能性もゼロではありません。
その他にもアルカリ性洗剤の「重曹」とクエン酸が混ざると、化学反応で二酸化炭素が発生します。
二酸化炭素は塩素ガスと比べると有害な気体ではありませんが、高濃度の状態で室内に充満すると酸欠の危険性があります。
ニオイや有害なガスは目では確認できないので、強アルカリ性洗剤で掃除するときは酸性洗剤への注意だけでなく、換気も忘れずにしましょう。
強アルカリ性洗剤の特徴や安全な使用方法についてご紹介しました。
強アルカリ性洗剤はpH値が高く身体に対しての刺激が強いため、油断すると思わぬ事故につながる危険性があります。
しかしガンコな油汚れやタンパク質汚れを洗浄するには便利な道具です。
強アルカリ性洗剤を活用するときは、今回の記事を参考にして正しい使い方を心がけましょう。
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