「エシカル」という言葉が最近話題になってきています。
企業もまたエシカルな取り組みを積極的に進めており、その重要性が高まっているのがわかります。
しかし企業がどのようなエシカルな取り組みを行っているのか、あまり知らない人もいるのではないでしょうか。
今回は企業がエシカルな取り組みを行うメリットや、具体的な事例についてご紹介します。
まずエシカルの概要について説明します。
エシカル(ethical)とは英語で「倫理的な、道徳的な」という意味があります。
このままの表現だといまいちイメージをつかみにくいですが「環境や社会、人に配慮したこと」といいかえれば伝わりやすいですよね。
エシカルな取り組みとは、その意味のとおり「環境や社会、人に配慮した取り組み」を指します。
また「環境や社会、人に配慮して消費をすること、あるいはその商品」を意味するエシカル消費、エシカル商品という言葉も使用されるようになりました。
エシカル消費はここ1、2年で注目されるようになりました。
ではなぜエシカル消費が積極的に行われるようになったのでしょうか。
こちらではその理由を説明します。
エシカル消費は環境問題の改善につながります。
わたしたちは生産された食べ物を食べたり、商品を購入したりしますがそのどれもが消費行動といえるでしょう。
商品が大量生産されるたびに、その消費行動も増加します。
消費行動が過剰になると資源の乱獲やゴミ焼却の負担増加につながるので、環境に悪影響を与えてしまうのです。
エシカル消費でムダな消費行動をおさえることで、持続的な環境の保全が可能です。
エシカル消費は社会や人の問題への貢献にもつながります。
販売している商品の原材料は国内ではなく、海外からも大量に輸入されています。
原材料の産地が発展途上国の場合、生産者は低賃金で先進国と取引をしているケースが多いです。
そのため先進国との貧富の差が埋まらず、貧困に苦しんでいる人たちが増えています。
また障がい者雇用として働いている労働者も同じように、低賃金で業務を行っていることが多いです。
このような商品の購入により、社会的立場の弱い生産者や労働者のサポートができます。
エシカル消費は環境問題や社会問題だけではなく、地域の問題にも関わっています。
このような地域で生産された商品を購入すれば、その地域の経済の活性化が見込めます。
地元や思い入れのある地域に足を運んだときはぜひ商品を購入してみましょう。
またネット通販でも地域の名産品や被災地の商品が販売されていることも多いので、気軽に地域の活性化を手伝えます。
エシカル消費はグローバルな視点も大切ですが、このような日本の地域に対する配慮も欠かすことはできません。
出典:エシカル消費とは
企業もまたエシカル消費に注目していますが、その理由はエシカル商品を提供して環境や社会に貢献できるからです。
消費者がエシカル消費を行うときは、エシカル商品を活用することが多いです。
そのため画期的なエシカル商品を提供できる企業ほど、売上だけでなく環境や社会にも貢献できるといえるでしょう。
エシカルの重要性が高くなっている今こそ、エシカル消費の取り組みを積極的に行う企業は今後の成長にもつながると考えられます。
エシカルの他にもテレビやインターネットで話題になっているのが「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」です。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字をとった略語のことで「持続可能な開発目標」という意味があります。
2015年の9月に国連サミットで決定された国際的な目標で、世界中の人々や企業が目標の達成を目指して活動中です。
SDGsの目標は17項目あり、さらに細かい169のターゲットで構成されています。
17の目標には「環境問題」の他に「健康・福祉」「ジェンダー」「経済成長」「技術革新」など、非常に幅広い課題があげられています。
SDGsはエシカルとの関わりも強く、17の目標のなかには密接な関係の項目があります。
このようにエシカルな取り組みを行うことはSDGsの目標達成につながることがわかります。
そのためSDGsの取り組みを推進している企業は、同時にエシカルな取り組みを行っている場合が多いです。
出典:持続可能な開発目標(SDGs)達成に 向けて日本が果たす役割
企業がエシカル消費に取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
こちらでは具体的なメリットについて3つ説明します。
メリットの1つとして、エシカル消費に取り組むことで企業のイメージアップにつながります。
環境だけでなく社会、地域の問題に積極的な姿勢であれば、企業に好印象を受ける人は増えるでしょう。
企業の信頼性も高まり、他社より自社の商品が選ばれやすくなります。
エシカル消費の取り組みを行うと、企業としての価値が高まります。
投資の世界では「ESG投資」と呼ばれる考え方が流行しています。
「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの要素を重要視した投資活動を指す言葉です。
投資を行うときにこの3つの要素が判断基準の1つになり、積極的に取り組んでいる企業ほど評価が高い傾向にあります。
エシカル消費に取り組む企業ほど投資先として選ばれやすくなり、その分企業価値が高まるということです。
そのためエシカル消費を行っている企業は投資としての価値だけではなく、消費者の視点での価値も高くなります。
エシカル消費を継続的に取り組むことで、新しいビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
先ほど「ESG投資」の説明をしましたが、投資の面でもエシカル消費の重要性を理解している企業はまだ少ないです。
他の企業よりエシカル消費を行えば、他社との大きな差別化を図れます。
またエシカル消費により新しい分野のビジネスにつながりやすいです。
このように、企業がエシカル消費に取り組むメリットはたくさんあります。
企業がエシカル消費を行うメリットがたくさんあることは分かりましたが、実際にどのような取り組みがあるのでしょうか。
こちらでは企業が取り組んでいるエシカル消費の内容を説明します。
エシカル消費に取り組んでいる企業の多くはエシカル商品を生産、販売しています。
エシカル商品には以下のようなものがあります。
日用品から食べ物まで、幅広いエシカル商品があり、それぞれ環境や社会に配慮して生産されています。
エシカル日用品はマイストローやマイバッグなど、使い回しのできる商品が多く、ムダなゴミが出ない配慮がされています。
エシカルフードは化学肥料や農薬を使用せず、自然の力で生産されたオーガニック野菜やフェアトレード商品が多いです。
そのため社会問題に配慮しつつ、自身の健康にもつながります。
エシカルファッションにはコットンやウールといったオーガニックな素材の衣服、廃棄された素材をリサイクルして生産されたバッグなどがあります。
消費者がそのエシカル商品を取り入れることで、より効率的なエシカル消費が可能です。
エシカル商品は原材料や労働者など、さまざま関わりがあってはじめて生産されています。
その生産工程を透明化して、エシカル消費の取り組みをアピールする企業も多いです。
原材料の地域や労働者にどのような配慮をしているのかを明確にすることで、企業のエシカル消費の取り組みがわかりやすくなります。
また生産工程が透明化すれば、エシカル商品の信頼性も高まるでしょう。
生産工程の透明化を高めるために、エシカル商品の目安となる認証マークを活用することもあります。
このような認証マークは環境や社会に配慮している商品だけが表示できます。
とくに「エコマーク」はわたしたちも多く見かけるほど有名ですよね。
認証マークがある商品だと、消費者としても安心感を持ちやすいです。
食品ロスを減らすための取り組みも行っています。
食品ロスとは「売れ残りや食べ残しといった、本来食べられるにもかかわらず廃棄された食品」を指します。
食品ロスは世界中で問題になっており、ゴミの廃棄量の増加で環境への悪影響を与えているのです。
その背景には、食べ物が豊富になったことや、手軽に購入できるようになったことがあげられます。
とくに食べ物を提供する居酒屋やホテルは食品ロスが出やすいです。
そのため市町村と連携して、食品ロスを減らすための呼びかけを行っているお店も増えています。
フェアトレードとは「原材料を適正な価格で取引をすること」です。
発展途上国の生産者に対して低賃金で取引をしていたり、必要以上の農薬を使用していたりするケースは少なくありません。
そのため生産者にとっても健康にとっても悪い影響が出ています。
環境や人に配慮するには生産者に正当な対価を支払い、品質のいい原材料を生産してもらうことが大切です。
目先の利益ではなく、持続的に良好な取引ができるようにフェアトレードの取り組みを行っています。
消費者がフェアトレード商品を購入することで、発展途上国の貧困問題の支援や環境破壊の防止につながります。
企業は地産地消の推進も行っています。
地産地消とは「その地域で生産されたものをその地域で消費すること」を意味しています。
地産地消のメリットは誰が、どこで作ったのかがわかるため、消費者も安心して購入できる点です。
また生産された地域で消費するので、運搬にかかる排出ガスも少なくなります。
地産地消を推進していけば、その地域の経済を活性化させることにもつながります。
地域にも消費者にも配慮できる取り組みといえるでしょう。
こちらでは実際にエシカル消費に取り組んでいる企業の事例を説明します。
セブン-イレブンでは、食品ロスを減らすために「エシカルプロジェクト」を2020年5月から全国で開始しています。
その目標は「2030年までに世界全体の1人あたりの食品廃棄物を半減にすること」です。
また販売期限が近づいた食品には「エシカルシール」が貼られます。
このシールがついた食品を電子マネーで購入するとボーナスポイントが付与されるため、消費者にとってもお得なシステムです。
このような取り組みにより店舗側だけでなく、消費者側も手軽にエシカル消費に協力できる体制が作られています。
さまざまな飲料商品を販売しているサントリーでは、プラスチックに対してのエシカル消費を積極的に行っています。
飲料用のペットボトルのキャップには100%植物由来原料を使用しており、これはサントリーが世界で初めて導入しています。
独自の技術によるペットボトルの軽量化やラベルの薄肉化で、石油由来原料、CO2排出量の削減に成功。
またサントリーの新しい「プラスチック基本方針」により、2030年までにすべてのペットボトルの素材をリサイクル素材、あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の使用のゼロを掲げています。
その他にも脱炭素社会やフェアトレード、生産工程の透明化など、幅広いエシカル消費の取り組みを行っています。
コープでは発展途上国を支援する取り組みが行われています。
その取り組みが「CO・OP×レッドカップキャンペーン」と「CO・OPコアノンスマイルスクールプロジェクト」です。
CO・OP×レッドカップキャンペーンでは、対象となるコープ商品を購入するごとに1円が国連WFP協会という支援団体に寄付されます。
その寄付金は支援先の国の給食を届けるために使用されます。
このキャンペーンは定期的に支援先の国を変更するため、多くの国に支援を届けられるのが特徴です。
2020年から3年間の支援先はミャンマー連邦共和国で、レッドカップキャンペーンの対象商品はヌードルやスープ商品があげられます。
もう1つの・OP×レッドカップキャンペーンはユニセフと共同しているプロジェクトです。
コープのトイレットペーパーを購入するたびにアンゴラ共和国に1円が募金されます。
募金で行う支援内容は学校に関係するもので、以下の5つです。
このように、学校として成り立たせるための支援を行っています。
出典:エシカル(Ethical)とは|コープ商品サイト|日本生活協同組合連合会
有名なコーヒーチェーンのスターバックスでは、2004年に「C.A.F.E.プラクティス」という独自の調達ガイドラインを作成しました。
このガイドラインにより、エシカルな原材料の調達をしながら質の高いコーヒーを提供しています。
C.A.F.E.プラクティスの条件はスターバックス側と第三者機関側に分かれており、以下の4つです。
またコーヒー豆の生産地ではファーマーサポートセンターを開設し、品質や生産性の向上をサポートしています。
毎月20日は「エシカルなコーヒーの日」として、各店舗で世界中のコーヒー生産者とつながりを感じられるようなプログラムを実施しています。
出典:エシカルなコーヒーの調達100%を目指して|スターバックス コーヒー ジャパン
キッチン用品から食品まで幅広い商品を展開しているSARAYAでは、2004年から「ボルネオ環境保全活動」に取り組んでいます。
パーム油で作られた植物性の洗剤である「ヤシノミシリーズ」をはじめとした商品を購入すると、その売上の1%がボルネオ島の環境保全のために利用されます。
ボルネオ島とは、アブラヤシというヤシの実から採取されるパーム油の生産主要国です。
アブラヤシの農園を拡大した影響で森林や野生生物が減少し、環境問題を引き起こしていることが取り組みのきっかけです。
環境保全のおもな内容は以下の4つです。
ちなみにRSPO認証とは2種類の認証制度があり、1つが農園や工場で一定の基準で持続可能な生産が行われている場合の「P&C認証」
もう1つがパーム油を使用する商品の生産過程で一定の基準を満たした場合の「SCCS認証」があります。
SCCS認証を取得した企業はパーム油を原材料とした商品にRSPOのマークを表示できます。
企業の取り組みはわたしたちのエシカル消費にも役立っていることがわかりました。
しかしわたしたちの身近で行える取り組みもたくさんあります。
最後に簡単にできるエシカル消費について説明します。
食品ロスを減らすためには、エシカルな食事を心がけることが大切です。
食べ物がたくさん店に並んでいるとついつい大量に購入してしまう方は、「これは必要な食べ物なのか」をよく考えてみましょう。
また料理をする際には食べ残しがない量におさえましょう。
「必要なものだけ購入する」「食べ残しをしない」という、この2点を守るだけでも食品ロスの削減に大きく貢献できます。
プラスチックの生産は地球温暖化の原因でもあり、陸だけではなく海の生物にも大きな被害が及んでいます。
プラスチックの使用を極力減らすために、脱プラスチックを意識したエシカル消費を行いましょう。
そのためには「ペットボトルを購入せずにマイボトルを使用する」「レジ袋を購入せずにマイバッグを使用する」などの取り組みがおすすめです。
さらに身近にできるエシカル消費はたくさんあります。
このように自宅でゆっくりしているときでもエシカル消費は行えます。
その他にも環境に対して意識すれば、その取り組みは無数にあるでしょう。
普段の生活でもちょっとしたエシカル消費を行ってみましょう。
企業がエシカルな取り組みを行うメリットや実際の事例について紹介しました。
企業はさまざまなエシカル消費を行っていますが、消費者が協力してはじめてその効果を発揮できるといえます。
そのためには企業だけではなく、わたしたち1人1人が意識してエシカル消費に取り組む必要があります。
わたしたちにも身近にできることはたくさんあるので、ぜひ日常のなかにエシカル消費を取り入れてみましょう。
エシカルノーマルでは地球環境や人に最大限配慮したハウスクリーニングを行っています。
「家の中を綺麗にしたいけど、外の環境を汚したくない……」
そんなエシカルな考えを持っている方は、ぜひご活用ください。
※10Rとは3Rのリデュース(ゴミを減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再利用する)から、独自に7つのRを追加した理念です